
グヌンカウィ・スバトゥ寺院
グヌンカウィ・スバトゥ寺院
碧い泉と鯉が泳ぐ池庭が美しい静謐の寺。浄化の祈りが息づく。
ウブドの北、緑豊かな渓谷にひっそりと佇むグヌン・カウィ・スバトゥ寺院は、水の女神ヴィシュヌに捧げられた、清らかな泉の寺院です。観光客で賑わう他の有名寺院とは一線を画し、静寂と祈りの空気に満ちています。寺院の敷地内には、聖なる泉から湧き出た水が満たす池がいくつも点在し、色鮮やかな鯉が優雅に泳いでいます。苔むした石像や美しい東屋が水面に映り込む光景は、まるで一枚の絵画のようです。ここは、ティルタ・エンプルと同様に「ムルカット(沐浴)」による浄化ができる場所として、地元の人々から深く信仰されています。観光客が比較的少ないため、より穏やかな気持ちでバリの水の信仰に触れたいと願う人にとって、まさに隠れた宝石のような場所と言えるでしょう。水の音と鳥のさえずりだけが響く空間で、心洗われる時間を過ごすことができます。
歴史と泉の伝説
この寺院の正確な建立年は不明ですが、その名は近隣のグヌン・カウィ遺跡と同様に、古代の王族との関連を示唆しています。「スバトゥ」という地名は、悪の王マヤデナワとの戦いで折れた創造神ブラフマーの武器が落ちた場所という伝説に由来するとも言われています。その武器が大地を打ち、聖なる泉が湧き出したと信じられているのです。寺院の建築様式には、古代ジャワのヒンドゥー文化の影響が見られ、バリ島の中でも特に古い歴史を持つ聖地の一つであることがうかがえます。
文化:二つの聖なる沐浴場
スバトゥには、二種類の沐浴場があります。一つは、本堂の脇にある「タマン・スチ」と呼ばれる緑豊かな池で、鯉と共に泳ぎながら沐浴ができます。もう一つは、渓谷の少し下流にある滝の沐浴場で、より自然に近い環境で浄化の儀式が行われます。特にタマン・スチは、ヴィシュヌ神の乗り物である神鳥ガルーダの像から水が注がれており、その水は病を癒す力があると信じられています。沐浴に参加する際は、敬意を払い、寺院の規則に従うことが大切です。
参拝の作法とルール
ここは特に神聖な場所とされているため、参拝者はサロンと帯の着用が必須です。沐浴を行う場合は、専用のサロンをレンタルします。大声で騒いだり、石鹸やシャンプーを使用したりすることは固く禁じられています。静かに、敬虔な気持ちで水に身を委ねることが大切です。写真撮影は許可されていますが、沐浴している人々や祈りを捧げている人々にカメラを向けるのは避け、プライバシーを尊重しましょう。
見どころ(ここをチェック!)
本堂エリアにある、水に浮かぶように建てられた東屋「バレ・カマン」は絶好の写真撮影スポットです。水面に映る建物と周囲の緑が、非常にフォトジェニックな景観を作り出します。また、寺院の入り口にある大きな割れ門(チャンディ・ブンタル)の精巧な彫刻も見事です。よく見ると、ヒンドゥー教の叙事詩「ラーマーヤナ」の物語が描かれています。物語を知っていると、彫刻の一つ一つがより興味深く見えてくるでしょう。足元は濡れて滑りやすい場所が多いので、歩きやすい靴で訪れることをお勧めします。




