
テガララン ライステラス
テガララン ライステラス
美しい棚田とココナッツの風景が広がる定番スポット。
ウブド北方の丘陵に広がるテガラランの棚田は、ただの絶景ではありません。景色である前に“みんなで守る水のしくみ”です。バリの人々が何世代にもわたり受け継いできた灌漑共同体「スバック」の思想と実践が、曲線を描く畦や水路の一本一本に刻まれています。水路の合流点や分水点には小さな祠が置かれ、田の神デウィ・スリや水の恵みに「ありがとう」を伝えるチャナン・サリ(供花)がそっと飾られます。村の人は当番で水門を見回り、祭礼の日には寺へ列を作って祈り、田仕事の合間にココナツや果物を分け合う——そんな暮らしが景観を支えています。風にそよぐ稲の音、用水のさらさらという響き、香のやさしい匂いに気づいたら、ここが“生活の畑”であることが自然と伝わってきます。観光地化が進んだ現在でも、小さな祠には供え物が絶えず、用水の分岐点には守護の儀礼が息づきます。朝靄のなか、田の端に差したココナッツの影がのびる光景は、単に“映える”だけでなく、水と稲と人の営みが織りなす文化景観としての深みを感じさせます。雨季後には緑が濃く、田植え・中干し・収穫という農期の巡りによって色調と匂いが変わり、同じ場所でも訪れるたびに表情が違うのも魅力です。
棚田とスバック(水を分け合う知恵)
急斜面でも米作りを可能にするため、畦で区切り、水路で“順番”に水を回すのがスバック。分水点には祠があり、祭礼では水と稲の神へ感謝を捧げます。作付や水門の開閉は村の話し合いで決まり、無理をしない範囲で手伝い合う(ンガヤ)文化が息づいています。旅行者は畦を崩さない、苗を踏まないといった配慮をするだけで、この協力の輪に静かに参加できます。
人々の暮らしと小さな祈り
朝、分水点や畦の角にチャナン・サリが置かれ、香の煙が細く立ちのぼります。収穫前には稲穂を束ねて祈る所作(デウィ・スリへの感謝)が見られることも。供花は“お願い”よりも“感謝”の意味合いが強く、道行く人もそっと会釈します。見学のときは供物をまたがず、写真は少し離れて。こうした作法を知っていると、何気ない風景がやさしいやりとりに見えてきます。
見どころ(ここをチェック!)
①分水点の小祠:花と香が置かれる“水の交差点”。②畦の曲線:丘の形に沿うリズムが美しい。③用水の“音”の変化:合流や落差で音色が変わる。④作業風景:苗運びや畦直しは声かけ合って進む共同作業。⑤高台のカフェ:上から見ると棚田全体の“設計”が理解しやすく、供花の点々も見つけやすい。
訪問のヒント(より楽しむコツ)
朝〜午前は涼しく、チャナン・サリが新しい時間帯。歩きやすい靴と飲み物、小銭(駐車・寄付)を準備しましょう。畦で人とすれ違うときは片手を空けて譲り合い、ドローン・大音量は控えめに。供物に気づいたら一歩さがって眺める——その距離感が、風景の“やさしさ”をいっそう感じさせてくれます。




