Bali Guide Logo
ワヤン・クリ(影絵芝居)|光と影の物語 - 1

ワヤン・クリ(影絵芝居)|光と影の物語

1 / 2

ワヤン・クリ(影絵芝居)|光と影の物語

水牛の皮で作られた人形と、ひとりで何役もこなす人形師ダラン。深夜まで続く叙事詩の上演。

ワヤン・クリは、バリ島の夜を神秘的に彩る伝統的な影絵芝居です。ガムランの生演奏が響く中、白いスクリーンの裏側で「ダラン」と呼ばれる一人の人形師が、水牛の皮で作られた精巧な人形を操ります。ランプの光に照らされた人形の影は、古代インドの叙事詩「ラーマーヤナ」や「マハーバーラタ」の壮大な物語を映し出し、観る者を神話の世界へと引き込みます。単なる娯楽ではなく、道徳や哲学を人々に伝える教育的な役割も担ってきました。善と悪、光と影が織りなす幻想的な舞台は、バリの精神文化の深淵を垣間見せてくれる、忘れられない芸術体験です。夜が更けるのも忘れ、その奥深い物語に聞き入ってみてはいかがでしょうか。

「ダラン」:一人で全てを操る超人的な人形師

ワヤン・クリの舞台は、「ダラン」と呼ばれる一人の人形師によって全てが支配されます。ダランは単に人形を操るだけではありません。何十体もの登場人物の声を一人で使い分け、物語を語り、観客を笑わせるアドリブを交え、さらにはガムラン楽団全体に合図を送って音楽を指揮する、まさに超人的な存在です。ダランになるためには、膨大な物語の知識、哲学的な理解、そして高度な身体技術が求められ、社会的に非常に尊敬される地位にあります。彼らは、神々と人間を繋ぐ司祭的な役割も担うとされ、その口から語られる言葉には特別な力が宿ると信じられています。ダランの巧みな話芸と人形さばきが、ワヤン・クリに生命を吹き込むのです。

光と影が描くヒンドゥー叙事詩の世界

ワヤン・クリで主に演じられるのは、古代インドの二大叙事詩「マハーバーラタ」と「ラーマーヤナ」を基にした物語です。これらの物語は、バリ・ヒンドゥーの教えの根幹をなしており、正義(ダルマ)とは何か、人間としての義務とは何かを説く、普遍的なテーマを扱っています。英雄たちの武勇伝、神々の介入、そして登場人物たちが繰り広げる愛と裏切りのドラマは、時代を超えて人々の心を魅了してきました。観客は、コミカルな従者のキャラクターに笑い、英雄の苦難に涙し、物語を通して人生の教訓を学びます。子供から大人まで、共同体の誰もが楽しめるこの影絵芝居は、バリの価値観を世代から世代へと伝えるための重要なメディアなのです。

儀式としてのワヤンと共同体の夜

ワヤン・クリは、単なる舞台芸術にとどまらず、寺院の祭礼(オダラン)や結婚式、歯削り儀礼といった重要な通過儀礼の一環として、深夜から夜明けまで上演されることも少なくありません。このような儀式の中で行われる上演は、その土地や人々を清め、悪霊を祓う力を持つと信じられています。上演が始まると、人々はスクリーンの前に集い、おしゃべりをしたり、お菓子を食べたりしながら、思い思いに芝居を楽しみます。それは、村の人々が一堂に会し、夜通し語り明かす大切な社交の場でもあります。神聖な儀式でありながら、誰もがリラックスして楽しめるこの雰囲気が、ワヤン・クリをバリ社会に深く根付かせ、共同体の絆を強める役割を果たしているのです。

概要

ギャラリー
ワヤン・クリ(影絵芝居)|光と影の物語 - 1
ワヤン・クリ(影絵芝居)|光と影の物語 | Balitra(バリトラ)| バリ島総合観光ガイド