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バリの伝統家屋|方角と機能で決まる空間配置 - 1

バリの伝統家屋|方角と機能で決まる空間配置

バリの伝統家屋|方角と機能で決まる空間配置

北向きの寝室、東の家族寺院、台所の位置。宇宙観が反映された住居設計。

バリの伝統的な家屋は、単に雨風をしのぐための建物ではありません。それは、バリ・ヒンドゥー宇宙観を地上に再現した「小宇宙(ミクロコスモス)」です。敷地のレイアウトは、「アスタ・コサラ・コサリ」と呼ばれる伝統的な建築教典に基づいて厳密に定められています。聖なる山アグンの方角(カジャ)を最も神聖とし、不浄な海の方角(クロッド)を俗なる場所とする方位観が基本です。この聖なる軸に沿って、家族寺院、寝室、客間、台所などが、それぞれ決められた場所に配置されます。一つの高い壁に囲まれた敷地の中に、機能の異なる複数の東屋(バレ)が点在するこの様式は、神と自然、そして家族との調和を何よりも大切にするバリの人々の精神性を映し出しています。

聖なる方位軸「カジャ・クロッド」

バリの家屋設計の根幹をなすのが、「カジャクロッド」という聖なる方位軸の概念です。バリの人々にとって、神々が住むアグン山のある方角「カジャ」は最も神聖で清浄な方角です。反対に、海のある方角「クロッド」は、不浄なものや死の世界と結びつけられています。このカジャクロッドを結ぶ軸と、太陽が昇る東「カンギン」と沈む西「カウ」の軸を基準に、敷地内のすべての建物の配置が決定されます。最も神聖な場所は、カジャカンギンが交わる北東の角で、ここに家族の祖先を祀る寺院が置かれます。逆に、ゴミ捨て場や家畜小屋は、最も俗なる南西クロッドカウの隅に作られるのが一般的です。

神聖な場所に建つ家族寺院「サンガ」

バリの家屋敷地内で最も重要な場所が、北東の角に位置する家族寺院です。これは「サンガ」または「ムラジャン」と呼ばれ、その家の祖先の霊を祀るための神聖な空間です。サンガには、ヒンドゥーの最高神や、アグン山バトゥール山の神々を祀るための複数の祠が建てられています。家族は、毎日のチャナン・サリ(供物)をここに捧げ、プルナマ(満月)やティレム(新月)の日、そして家族の重要な儀式の際には、正装してここで祈りを捧げます。家の中に常に神聖な祈りの場があることは、バリの人々が日々の暮らしの中で、常に神々や祖先との繋がりを意識していることを象徴しています。

機能を持つ東屋「バレ」の集合体

バリの伝統家屋は、一つの大きな建物ではなく、壁で囲まれた敷地内に、それぞれ異なる機能を持つ複数の東屋(バレ)が配置されているのが特徴です。北側(カジャ)には、一家の主や年長者が休むための寝室棟「バレ・ダジャ」があります。東側(カンギン)には、儀式や祭礼の際に使われる「バレ・ダンギン」が、西側(カウ)には、客をもてなしたり、若夫婦が暮らす「バレ・ダウ」が建てられます。そして南側(クロッド)には、日々の食事を作る台所「パオン」が置かれます。これらのバレは壁のない開放的な構造になっており、家族間のコミュニケーションを促し、自然の風を取り込む役割も果たしています。この開放的な空間構成が、バリの家屋に独特の心地よさを生み出しているのです。

概要

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